社長満足クラブ第63回例会報告

  • テーマ: 表には出しづらい、公認会計士が見てきた経営の裏側
  • プレゼンター:加藤 肇(加藤肇公認会計士・税理士事務所 代表)
  • 開催日:2026年6月8日(月曜)18時30分から
  • 開催地:都内会議室(八丁堀駅徒歩5分)

内容概要

  1. 公認会計士とは?
  2. 会計監査とは?
  3. 監査の現場で起きていること

加藤 肇


■経歴 

加藤 肇(加藤肇公認会計士・税理士事務所 代表)

公認会計士は、会計監査や財務面の健全性確保を担い、企業全体の透明性を支える専門家です。
税理士が主に税務申告や節税対策を担当するのに対し、公認会計士は、企業の数字や内部体制を第三者視点で確認し、経営の健全性を支える役割を担っています。

こうした専門性を活かし、税務を超えた事業成長や財務体制強化を支援しているのが加藤氏です。

加藤氏は2008年にEY新日本有限責任監査法人に入所し、証券業や重工業メーカーなど多岐にわたる業界で監査業務を経験。
その後、2018年に加藤肇公認会計士事務所を設立しました。

現在は、経理支援、IPO準備、財務体制の強化など、企業の成長を支える包括的なサポートを提供しています。
また、多くの企業の数字や内部実態を見てきた経験をもとに、事業成長とガバナンスを両立させる支援を行っていることも強みです。

開催概要

今回の例会では、「公認会計士」という仕事のリアルについてお話しいただきます。

公認会計士というと、

・難関資格
・数字の専門家
・エリート職業

といったイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。

実際、公認会計士試験は非常に合格率が低く、高度な専門知識が求められる国家資格です。
一方で、その仕事内容については、意外と知られていません。

「監査をしている人」
「数字をチェックする人」

という印象を持たれることも多いですが、実際の現場では、膨大な業務量や厳しい納期対応に加え、経営陣とのシビアなコミュニケーションなど、非常にハードな側面もあります。

また、公認会計士は、多くの企業の内部実態や数字を見ていく立場だからこそ、外からは見えない経営課題や、“なぜ問題が起きるのか”というリアルな現場にも数多く触れています。

今回は、そうした普段なかなか聞くことのできない、

・公認会計士の実際の仕事
・監査現場のリアル
・労働時間やプレッシャーの実態
・経営陣との折衝で感じること
・実際に現場で見てきた印象的なエピソード

などについて、公認会計士の視点から率直にお話しいただきます。

「会計」や「監査」に詳しくない方でも楽しめる内容ですので、ぜひお気軽にご参加ください。。

開催報告

 2026年6月8日、八丁堀の都内会議室にて、第63回「社長満足クラブ」定例会が開催されました。 今回のプレゼンターは、加藤肇公認会計士・税理士事務所の代表である加藤 肇 氏。大手監査法人での豊かなキャリアを経て独立し、現在はIPOやM&A、スタートアップ支援の最前線で活躍するプロフェッショナルです。

「難関資格」「数字のエリート」といったスマートなイメージの裏側にある、公認会計士たちの過酷なリアル、そして数々の大企業で起きてきた「経営の歪みと不正の真実」について、表には出せない生々しい裏話を交えて熱く語っていただきました。参加者一同、知的好奇心を大いに刺激された白熱の1時間半をレポートします。

1. 華やかなイメージの裏側にある「監査法人のリアル」

まずは、意外と知られていない「公認会計士」と「税理士」の違い、そして加藤氏のバックグラウンドの紹介からスタートしました。

税理士が主に「過去の数字」をもとに税務申告や節税対策を行うのに対し、公認会計士は独立した第三者の視点から「企業の数字や内部統制の健全性」を厳しくチェック(監査)し、社会的な透明性を保証する役割を担います。

加藤氏は大手監査法人(EY新日本有限責任監査法人)に10年間勤務し、証券業や重工業メーカーなどの監査を歴任。その後立ち上げた監査法人は順風満帆だったものの、業務過多による中堅監査会社との合併を機に退任し、現在のコンサルティング・監査・税務の3本柱をメインとする事務所を設立したという、波乱万丈かつリアルなキャリアの持ち主です。

そんな加藤氏の口から語られたのは、「監査法人は超ブラックで、極限のプレッシャーと戦う知的格闘の場である」という驚きの実態でした。

監査現場の過酷な日常

  • 「業界一社」の暗黙の了解: 大手監査法人の間には、競合他社と同じ法人を使わないという「暗黙の了解」が存在します(例:あるメガバンクがあずさ監査法人なら、別のメガバンクは別の法人へ)。
  • 逃げ場のない品質チェック: 提出した監査書類は、金融庁、日本公認会計士協会、さらには所内の品質管理部からランダムに調査されます。もし重大なミス(NG)が見つかれば、署名した会計士のキャリアは事実上終了するという、凄まじいプレッシャーの中で業務が行われています。
  • 愛着が生むリスク: 担当になると毎日その会社へ通い詰めるため、クライアント企業への強い「愛着」が湧いてきます。しかし、その距離感の近さが、時として判断を鈍らせる罠にもなり得るのです。

2. 徹底解剖!なぜ経営者は一線を超えてしまうのか?「不正のトライアングル」

本編の核心として語られたのが、企業の命運を分ける「不正会計」のメカニズムです。加藤氏は、犯罪心理学でも用いられる「不正のトライアングル」という概念を引き合いに出し、これら3つの要素が揃った瞬間に、どんな真面目な人間でも不正に手を染めてしまう怖さを語りました。

  1. 動機・プレッシャー: 経営危機や、上層部からの厳しすぎるノルマ。
  2. 機会: 記帳(チェック)と入出金(実行)を同じ人が担当しているなど、不正ができる環境。
  3. 正当化: 「会社を守るためだ」「一時的に借りるだけ、後で戻せばいい」という心の言い訳。

このメカニズムが生んだ、歴史に語り継がれる巨大事件の裏側について、公認会計士の視点から鋭いメスが入りました。

事例①:東芝不正会計事件(2015年発覚)

累計2,200億円にものぼる利益水増しが横行したこの事件。リーマンショックや東日本大震災による業績悪化を背景に、経営陣から現場へ「絶対達成」の過大なノルマ(プレッシャー)が課されました。 内部統制は完全に形骸化し、赤字工事を隠蔽したり、決算期をまたいだ売買(バイセル取引)、経費の過少計上や在庫の評価減見送りなど、ありとあらゆる手法が使われました。

ここで参加者が最も息を呑んだのは、「なぜ監査法人はそれを見抜けなかった(言えなかった)のか」という点です。答えはシンプルでした。東芝は監査法人にとって、失うわけにはいかない「特上の顧客」だったのです。 結果として、サインした公認会計士は全員解雇、監査法人は21億円の課徴金と3ヶ月の業務停止処分を受け、組織の信頼は地に落ちました。

事例②:三菱重工・日立製作所の南アフリカ火力発電訴訟

南アフリカの工場での労使紛争や工期遅延により、膨大な赤字を出していたプロジェクトを巡る紛争。興味深いのは、三菱側・日立側、両方のチームに同じ「新日本監査法人」が当たっていた点です。 同じ組織でありながら、法人内部の「日立チーム」と「三菱チーム」が真っ向から対立。社内での権力バランス(声の大きいチーム)が判断に影響を与えるという、組織の歪みが露呈した事例として紹介されました。

3. 数字のプロが見抜く、経営を歪ませないための「3つの教訓」

加藤氏は、長年現場で戦ってきたからこそのリアルな教訓を、私たち経営者に向けた熱いメッセージとして締めくくりました。

  1. 不正をする人も、監査する会計士も「同じ人間」である: 誰もが完璧ではないからこそ、仕組みによる牽制が必要。
  2. 追い詰められた心理は、判断を異常にする: 特に資金繰りが厳しくなると、普段なら絶対にしないようなおかしな意思決定や、歪んだ判断をしてしまう。
  3. カギは、心理への洞察とコミュニケーション: 数字だけを見るのではなく、現場の人間関係や心理状態を把握することこそが、状況の異変に気づく最大のヒントになる。

会計士と経営者の「知恵比べ」

日々の監査業務は、サンプリング(抽出調査)によるチェックが基本です。だからこそ、経営者が意図的に仕組んだ「循環取引(中身のない取引をぐるぐる回して売上を偽装する行為)」などは非常に見つけにくいと言います。 時には、会計士が自ら現場へ赴き、倉庫に眠る在庫を実際に目で見て確認することもあります。「そこにあるように見せかけている嘘」を見抜くため、現場では日々、極限の知恵比べが繰り広げられているのです。

だからこそ、経営がポカれた状況(危機的状況)に陥る前に、客観的な視点を持った「外部の専門家」を正しく頼ることが、会社と従業員、そして経営者自身の身を守るために不可欠であると熱く語られ、講義は幕を閉じました。

4. 編集後記(例会を終えて)

今回の定例会は、普段私たちが決算書やニュースの文字面だけで見ている「会計」の世界が、いかに血の通った、そして時にドロドロとした「人間の心理ドラマ」であるかを痛感させられる時間でした。

加藤氏が通常の監査業務を泥臭く続けているからこそ、M&Aにおける買われる側の「簿外負債(隠れた借金)」の炙り出しや、正確な株価算定、PMI(M&A後の統合プロセス)といったコンサルティング業務において、圧倒的な強みを発揮できる理由が深く腑に落ちました。

単なる数字のチェックに留まらず、企業の成長とガバナンス(統治)を両立させる加藤氏のパッションに触れ、参加した経営者たちにとっても、自社の身の引き締まる思いと、未来へのワクワクとした活力を同時に得られる貴重な例会となりました。

(報告作成:社長満足クラブ 事務局)

プログラム

開始時間内容担当
18:30開会 趣旨説明高田敬久
18:35自己紹介全員
18:40あなたの知らない会計監査の世界加藤肇
19:20質疑応答
19:25振り返り高田敬久
19:55閉会 次回予告

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