社長満足クラブ第61回例会報告

  • テーマ: 中小企業が取り組む脱炭素経営とは
  • プレゼンター:桑島 哲哉(合同会社桑島技術士事務所 代表社員)
  • 開催日:2026年4月6日(月曜)18時30分から
  • 開催地:都内会議室(八丁堀駅徒歩5分)

内容概要

  1. 国家資格技術士とは?
  2. COP21から始まった脱炭素経営
  3. 中小企業に求められている脱炭素経営

桑島 哲哉


■経歴 

桑島 哲哉(くわしま てつや)
(合同会社桑島技術士事務所 代表社員)

 東北大学工学部卒業後、京セラ、ヤマハ、TDKにて、電子部品・半導体分野の設計開発から環境・省エネ推進まで、40年以上にわたり製造業の現場に携わってきました。
 若い頃は技術者として新製品やプロセス開発に打ち込みましたが、ヤマハ時代、開発成果を上げたにもかかわらず、経営上の大きな判断の中で新設工場ごと売却される経験をし、技術だけでは現場も事業も守れないことを痛感しました。この経験を通じて、技術と経営の両方を見なければ、本当に役立つ仕事はできないと考えるようになりました。
 TDKではHDDヘッド開発のほか、環境部門責任者として10年間、全社の省エネ推進、再生可能エネルギー導入、環境目標設定などに携わり、2019年省エネ大賞、2023年国内使用電力の再エネ100%化にも関わりました。
 現在は合同会社桑島技術士事務所代表として独立し、企業の脱炭素経営とエネルギー管理の支援を行っています。現場の技術や設備がわかり、同時に経営の言葉でも考えられることを強みとし、「脱炭素経営と現場の翻訳者」として、無理なく続く仕組みづくりを大切にしています。

開催概要

 今回の例会は、「脱炭素」と「中小企業経営」という、一見すると距離がありそうで実はこれから大きく関わってくるテーマを取り上げます。プレゼンターは技術士の桑島哲哉さんです。

 「技術士」という資格をご存じですか?技術士は、理系分野の国家資格の中でも高度な専門性を持つ資格なのですた、あまり知られていないかもしれません。実は、企業の技術的な課題を解決したり、新しい仕組みづくりに関わったりと、社会のさまざまな場面で活躍している専門家です。例会では、技術士という仕事の広がりや役割について、具体的な事例を交えながら紹介してもらいます。

 桑島さんがこれまで技術士としてどのような仕事に携わってきたのかという経験談にも触れていきます。技術分野の専門家として企業の課題と向き合ってきた現場の話には、経営者にとっても多くの学びがあるはずです。普段なかなか聞くことのない「技術のプロの仕事の世界」を知る機会にもなります。

 そして今回の例会の中心テーマとなるのが「脱炭素経営」です。最近よく耳にする言葉ですが、「自分の会社にはまだ関係ない」と感じている方も少なくないかもしれません。実際、この流れはヨーロッパでの国際的な合意(COP21)をきっかけに広がり、大企業を中心に取り組みが進んできました。有価証券報告書の中にサステナビリティに関する情報開示が求められるようになり、さらにサプライチェーン全体、つまり取引先企業にも環境への対応を求める流れが生まれています。

 つまり、これまで大企業の話と思われてきた脱炭素の取り組みが、少しずつ中小企業にも影響を及ぼし始めているということです。大企業が環境対応を進めれば、取引先にも同じ姿勢を求めるようになります。何も準備をしていない企業は将来的に取引の機会を失う可能性もあります。一方で、早い段階から取り組みを始めた企業は、競合より一歩先に進むことができ、新たな信頼やビジネスチャンスにつながる可能性もあります。

 とはいえ、「脱炭素」と聞くと、大企業の壮大な取り組みばかりが紹介され、「とても自社ではできない」と感じてしまうことも多いものです。そこで今回の例会では、従業員20人程度の中小企業でも少しずつ始められる現実的な方法にも焦点が当たります。

 中小企業が脱炭素に取り組む際に起こりがちな失敗事例や、その対策についての話も予定されています。また、「まずはここから始めてみる」というスモールステップの考え方や、取り組みに活用できる補助金などの公的制度についても触れられます。大きなテーマをいきなり完璧に進めるのではなく、小さく始めて着実に進めていく方法が見えてきそうです。

 脱炭素への取り組みを乗り越えた企業にはどのような未来が広がるのか。逆に、何もせずにいるとどのようなリスクが生まれるのか。経営の視点から脱炭素を考えることで、これまでとは違った景色が見えてくるかもしれません。

 「まだ関係ない」と思っていたテーマが、実は自社の未来と深くつながっている可能性もあります。これからの時代の経営を考えるヒントが得られる例会になりそうです。次の社長満足クラブで、ぜひ一緒に学びを深めてみませんか。

開催報告

テーマ:「脱炭素経営と中小企業のこれから」

今回の社長満足クラブでは、「脱炭素経営」をテーマに、技術士として現場と経営の両面に精通した講師をお招きしました。環境問題というとどこか大企業や行政の取り組みというイメージを持ちがちですが、今回の講演を通じて、それがすでに中小企業にとっても“避けて通れない経営課題”になっていることを強く実感する時間となりました。

まず印象的だったのは、「脱炭素の流れはサプライチェーン全体に広がっている」というお話です。大手企業が環境対応を進める中で、その取引先である中小企業にも同様の取り組みが求められ始めています。今後は、単に品質や価格だけでなく、「環境への取り組み」が取引継続の前提条件になる可能性もあるとのことでした。

その背景には、2015年のCOP21(パリ協定)以降、「気候変動は金融リスクである」という認識が世界的に広がったことがあります。企業の環境対応は投資判断にも直結し、開示基準への対応が求められる時代になっています。上場企業ではこうした基準への適合が必須となり、その影響は確実に中小企業にも波及してきています。

しかしながら、「何から始めればよいかわからない」という声が多いのも現実です。講師はここで、「だからこそ経営方針として位置づけることが重要」と強調されました。個別の施策を場当たり的に進めるのではなく、自社としての方向性を定めることで、無駄なく効果的に取り組むことができるというわけです。

具体的な第一歩として紹介されたのが、CO₂排出量の“見える化”です。排出量は、「電気・燃料・ガスなどの使用量(活動量)」に「排出係数(マスター)」を掛け合わせることで算出できます。一見専門的に見えますが、基本的な仕組みはシンプルで、誰でも取り組むことが可能です。まずは自社の現状を正しく把握することが、すべてのスタートになります。

さらに講演では、具体的な企業の取り組み事例がいくつも紹介されました。例えば、セラミック製品を扱う工場では、1200度にもなる焼成炉の周囲を耐熱反射カーテンで囲うことで、作業員が感じる表面温度を大幅に低減。その結果、作業環境が改善されただけでなく、空調にかかる電力も削減されました。

また、倉庫の屋根に断熱反射シートを施工した事例では、室温の上昇が抑えられ、エアコン使用量の削減につながったとのことです。特にチョコレートの保管倉庫では、品質維持とコスト削減の両立が実現されたという点が非常に印象的でした。

さらに、ある中小企業では、重油ボイラーの廃止や再生可能エネルギーへの転換を進めた結果、10年間でCO₂排出量を300トンから10トンへと大幅に削減した事例も紹介されました。こうした取り組みは、単なる環境対応にとどまらず、企業価値の向上にもつながっています。

ここで重要なのは、「脱炭素=コスト増」という固定観念を見直すことです。講師は、温暖化対策には「原因を減らす対策」と「適応する対策」の2つがあると説明されました。暑さ対策や作業環境改善といった“適応”の視点から取り組むことで、結果的にエネルギー削減やコストダウンにつながるケースも多いのです。

また、今後の経営においては、「選ばれる会社になる」という視点も欠かせません。中小企業版SBTやエコアクション21といった認証の取得は、取引先や金融機関からの評価向上につながる可能性があります。実際に、こうした取り組みが融資条件に影響を与えるケースも出てきているとのことでした。

さらに印象的だったのは、「従業員の“めんどくさい”を“やらなければならない”に変えることが経営の役割」という言葉です。脱炭素は一部の担当者だけで進めるものではなく、現場全体で取り組む必要があります。そのためには、経営者自身が意義を理解し、現場との“翻訳者”となることが求められます。

今回の例会を通じて感じたのは、脱炭素は決して遠い話ではなく、「自社の経営そのもの」として考えるべきテーマだということです。小さな一歩でも、まずは始めること。そして継続していくことが、これからの時代を生き抜く企業にとって重要になると感じました。

参加者からも、「自社でもできることが見えてきた」「まずは電気使用量の見直しから始めたい」といった声が多く聞かれ、学びをすぐに行動に移そうとする前向きな空気が印象的でした。

社長満足クラブらしく、実践につながる気づきと、経営者同士の刺激的な対話にあふれた今回の例会。次回もまた、新たな視点と学びの機会を提供してまいります。ぜひご期待ください。

プログラム

開始時間内容担当
18:30開会 趣旨説明高田敬久
18:35自己紹介全員
18:40 中小企業が取り組む脱炭素経営とは桑島哲哉
19:20質疑応答
19:25振り返り高田敬久
19:55閉会 次回予告

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