社長満足クラブ第55回例会報告

  • テーマ: AR/VRバーチャルを活用した新時代の防災訓練
  • プレゼンター:板宮 晶大(一般社団法人AR防災代表理事)
  • 開催日:2025年9月8日(月曜)18時30分から
  • 開催地:都内会議室(八丁堀駅徒歩5分)

内容概要

  1. AR煙・消火体験
  2. AR浸水体験
  3. VR地震体験

板宮 晶大


■経歴 

板宮 晶大(いたみや あきひろ)

一般社団法人AR防災代表理事/防災士1978年東京都小平市生まれ。

阪神淡路大震災の際、当時高校1年生だったが、単身で春休みにボランティアに参加。
兵庫県西宮市に1週間滞在し、炊き出しや仮設風呂の撤去などを経験。

その後、2011年の東日本大震災をきっかけに、兄の朋基が防災アプリの開発に着手。
小学校の避難訓練でAR/VRアプリが初めて使用された現場に運営スタッフとして関わり、楽しく積極的に防災を学ぶ児童たちの姿に深い感銘を受ける。

この経験から、より実践的な防災教育の必要性を痛感。AR・VRで災害を疑似体験できるシステムを広めるため、2020年に起業し、AR防災の代表理事となる。

開催概要

我々が提案するのは「リアル感を強く感じられる体験」です。

神奈川歯科大学の板宮教授が開発したAR(拡張現実)技術を駆使した、新しい形の災害体験が可能です。

VR(仮想現実)では映像を全て作り込む必要がありますが、ARはあなたがいるその場の災害を体験できます。
つまり、いつも通っている職場・学校・自分の部屋、慣れた場所、なおかつ災害に遭う危険性が高い場所で訓練が出来るのです。

①手軽に出来る
 →小学生からシニアまで誰でも簡単に体験でき、大掛かりな設備が不要なため、運営者の負担も少ない
②体験してみたいと思わせる
 →”避難訓練離れ”が進む中、AR・VRにエンターテイメント性があるため、「体験してみたい」と思わせることができる
③災害をリアルに感じることで防災を自分事化できる
 →被災する可能性の高い身近な場所で災害の疑似体験が可能。

AR、VRの映像により、想定以上に災害が危険だということを体感することができる。

開催報告


「VRで学ぶ防災 ― 正しく怖がることの大切さ」

9月の社長満足クラブは、舞台俳優・イベント運営、そしてVR防災体験の仕掛け人としてご活躍されている板宮氏をゲストにお迎えしました。
今回のテーマは「防災」。少し硬いイメージのあるテーマですが、板宮氏のご経験とVRを活用したユニークな取り組みにより、参加者全員が引き込まれるあっという間の1時間となりました。


舞台俳優から防災VRへ

板宮氏のキャリアは舞台俳優からスタートしました。奥様は元お笑い芸人で、現在は小学校の先生。ご夫婦そろって人前に立つことに長けておられ、自然と「人に伝えること」を軸に活動を広げてこられたそうです。

転機となったのは、阪神淡路大震災と東日本大震災。前者ではボランティアとして現場に立ち、後者ではラジオで計画停電の情報を発信。被災地と向き合う中で、「防災をもっと身近に体験できる仕組みが必要だ」と強く感じられたそうです。

さらに、医療系のAR・VRアプリを開発していた実兄の影響もあり、2015年には災害体験VRアプリを開発。当時は「VR元年」と呼ばれた時期であり、舞台で培った演出力、イベント運営のノウハウを生かしながら、新しい防災教育の形を作り上げていかれました。


自助・共助・公助を知る

防災の基本として語られたのが「自助・共助・公助」です。阪神淡路大震災で公助により助かった人はわずか2%。自力で生き延びた人が35%、残りは家族や近隣の人による「共助」でした。

また、東京都の人口は1400万人に対し、救急車の数はたった274台という事実も衝撃的です。つまり「公助には限界がある」ということ。行政自身が「公助に頼らないでください」と呼びかけているのです。

板宮氏は「大事なのは正しく怖がること」と語ります。災害時、人の7割以上が呆然として動けなくなるという調査結果があります。非常ベルが鳴っても周囲が逃げないから大丈夫と思ってしまう「同調性バイアス」や、危険を日常だと錯覚してしまう「正常性バイアス」が私たちの行動を鈍らせるのです。だからこそ、知識を持ち、日頃から「もしもの時」をシミュレーションしておくことが必要だと強調されました。


火災・地震・浸水をVRで体験

講演では、火災や浸水時の行動についても具体的なアドバイスがありました。

  • 火災:煙で上の非常口サインは見えない。火元は真ん中を狙って小刻みに消火。濡れタオルで口を覆うのはNG。
  • 浸水:足元が見えないので杖で探りながら進む。水平避難より垂直避難が基本。1mの浸水で致死率100%。
  • 地震:重い家具を上に置かない。避難所と避難場所の違いを理解しておく。

そして実際に、震度6強のVR体験映像も紹介されました。激しい揺れに加え、物が落ち、壊れ、倒れていく光景は「もし自分がその場にいたら…」と参加者を圧倒。会場からは「これは一度体験しておかないと動けない」「言葉で聞くのと体感するのとではまったく違う」といった声が上がりました。

【消火訓練体験】

【水没する会議室】


防災はマナー

最後に板宮氏が強調されたのは「防災はマナー」という言葉です。自分を守る自助、家族や地域を助ける共助があってこそ社会全体の安全が守られる。避難場所を確認する、ハザードマップに目を通すといった小さな行動が、大切な人の命を救うことにつながります。


まとめ

今回の例会は、VRという最新技術を通じて防災を「自分ごと」として体験できる貴重な時間でした。参加者同士も「うちの会社では何ができるか」「社員教育にどう取り入れるか」といった熱い議論が交わされ、まさに社長満足クラブらしい学びと交流の場となりました。

「正しく怖がる」ことを心に刻みつつ、日々の備えを見直すきっかけをいただいた今回の例会。次回もまた、ユニークで学びの多い出会いが待っています。皆さまのご参加を心よりお待ちしております。


プログラム

開始時間内容担当
18:30開会 趣旨説明高田敬久
18:35自己紹介全員
18:40AR/VRバーチャルを活用した新時代の防災訓練板宮 晶大
19:20質疑応答
19:25振り返り高田敬久
19:55閉会 次回予告

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